リスクカードの「倉庫火災」…
それを引いたら、ある意味いちばん盛り上がりますよね(何個も材料があれば意気消沈ものです)
そのためか、シニアルールでは無災害倉庫のレンタルは必須です
<問題>
それでは倉庫が1つしか借りることができない場合(これが制約条件です)
材料倉庫と営業所のどちらに置けばよいのでしょうか?
<解説>
ほとんどの人(ベテランも含めて)はこう置いています
1.材料倉庫を優先する
理由… 倉庫の材料は全焼するが、営業所の盗難は2個で済むから
2.もし材料倉庫にある材料の個数が2個以下の場合は営業所を優先する
理由… 火災で失う個数が同じかそれ以下の場合は商品の盗難のほうがダメージが大きいから
よって材料が3個以上ある場合はそちらにおいて置くのが正しい
本当にそうでしょうか?
ここで、商品がお客様に届くまでの時間(H)の概念が必要になります
「どこに倉庫を置くのか?」
なにを優先するべきなのかは
得られるであろう、得られるであったはずの遺失MQ(潜在MQ)とHQ(工数や日数)との関係で考えるべきです
3.完成投入が6個のケースを考えてみます(想定P=28 V=15とします)
①材料(単価13円)6個火災の場合 遺失MQは@13×6個で78円
②2個盗難の場合 遺失MQは@13×2個で26円
そして、遺失した商品が新たに販売までに要するHQ(工数・時間)は
①材料なら4行(4日)かかり(材料を買う→仕掛品(工場へ)→営業所(にくる)→販売する)
②商品の場合は2行(2日)です(営業所へくる→販売する)
MQ/HQ すなわちM/Hを計算すると
①は78円÷4日=19.5円
②は26円÷2日=13円 となります
つまりこの場合はM/Hが①は②の13円以上なので、倉庫は材料倉庫に置くべきであるとなります
反対に倉庫に材料が4個以下の場合の遺失利益は@13×4個=52円
M/Hは52円÷4日=13円で営業所に置いた場合と同じなので
営業所に置くのが良いという判断になります
<まとめ>
ストレージ公式
X個を材料倉庫に置く材料の数量とします
X*M/HQ > 2*M/HQ 左辺(倉庫)のHは4、右辺(営業所)のHは2である
X*M/4Q > 2*M/2Q
XM/4 > 2M/2
XM > 4M
∴ X > 4
M=遺失限界利益 H=日数(行数) Q=工数(生産能力)
材料倉庫に材料が4個までの場合は、無災害倉庫は営業所に置くほうが良い(営業所に製品が1個以上ある場合です)
材料倉庫に材料が5個以上の場合は、無災害倉庫は材料倉庫に置くほうが良い
意思決定のための科学
比較の対象と範囲を決めることが大切です
今回のケースでの対象は「遺失MQ」で、範囲(評価の尺度)はそれが生み出される時間(M/H)です
MQとM/Hは常に意識しておかないといけない王様です
〈初出日 2014.0915〉