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要素法で考える

けさの朝日新聞経済欄(2017.1108)に焼き鳥チェーン店のPアップとQダウンの記事が載っていました

記事にはこう書いてあります

1.価格を280円から298円に値上げした(6.4%アップ)
2.しかし客数は7.0%減った
3.なので売上高は3.8%減となった
4.客単価は3.5%アップしたが、値上げ幅(6.4%)までは届かない

MGを勉強すると、それはおかしい、そうじゃないでしょうと思うはずです
その理由は2つあります

ひとつは「率ではなく量」が重要であること
もうひとつは、「利益に寄与する貢献度(つまり利益感度)は要素別でまったく異なる」というふたつの視点がないことです

率管理の弊害については今回は割愛して、ここで問題にしたいのは
「10%値引きしても、10%数量が増えれば、結果は同じだからいい」というのと同じ理屈であることです
これは大きな危険性をはらむと同時に、意思決定を誤らせる可能性が大です

なぜなら、経営を構成するP・V・Q・F・Gの5つの要素はそれぞれの利益感度がまったく違うからです

この記事はPを6.4%アップしたけれど、Q(客数)が7%減ったので、PQもその分上がらなければこの値上げは「失敗」した
という理屈です

Qは客数ではなく品数で考えないといけません
すなわち客数×品数=総品数であり、これが本来のQになります

ここでは客単価はアップしたが、一人あたりの品数が減少して売上が下がったとあります
売上と客数および客単価で推測する本当のQの減少は9.6%であることがわかります

しかし、どんな会社でも赤字でない限りPの感度が一番敏感で、PアップはGアップにもっとも貢献します
今回の情報からP/Lの内容までわかりませんが、MQの中身はおおむね推測できます

焼き鳥のV率(原価率)はおおむね25から30%です(なのでV感度は鈍いことがわかります)
Pを上げるのに相当な覚悟がいったでしょうが、要素法で考えるとQ(品数)がどこまで落ち込んだらまずいのかということを
実行するまえにシミュレーションできます

値上げするまえと、同じMQで良いのならQゼロポイントは8.4%減です
今回、Qの減少率は9.6%ですので台風の影響がなければ、おそらくMQは値上げ前よりもトントンもしくはアップしたのではないでしょうか?
また客数が減ったことでF1ダウンの効果もあったかもしれません(飲食店の最大の経営課題は人手の確保ですから)
そして、今後はQアップの方策をF4をかけることで実施していくことでしょう

Pアップの効果は絶大です
Qダウンが想定内に収まることになれば、このチェーン店の意思決定は正しかったといえます

記事は経営の表層しか捉えておらず、値上げは失敗した的な文章ですが、値上げをすればQが下がるのは当たり前です
本質はどこまでQダウンするのかをシミュレーションして意思決定をすることが肝心です

※要素法とは西 順一郎先生がソニー時代に考案した会計手法の概念です
P・V・Q・F・Gの5要素を使って企業の経営実体を科学的に分析し、意思決定に絶大な威力を発揮します

〈初出日 2017.1108〉